ジフェニルジスルフィド (diphenyl disulfide) は、有機硫黄化合物でジスルフィドのひとつ。省略して Ph2S2 とも書かれる。無色の結晶で、有機合成化学で用いられる最も有名なジスルフィドの一つである。チオフェノールが不純物として微量含まれるのが不快臭の原因である。水には溶けない。

合成と分子構造

ジフェニルジスルフィドは通常、チオフェノールの酸化でヨウ化水素と共に作られる。

2 PhSH I 2 Ph 2 S 2 2 HI {\displaystyle {\ce {{2PhSH} {I2}-> {Ph2S2} 2HI}}}

また、過酸化水素も酸化剤として用いられる。しかし、ジフェニルジスルフィド自体が安価であり、チオフェノールが不快臭を持つため実験室で合成されることはほとんどない。

反応

ジフェニルジスルフィドは有機合成化学においてフェニルチオ基 (PhS-) の供給源として用いられる。典型的な反応ではエノラートを経由して、フェニルチオ基で置換されたカルボニル化合物を与える。

RC ( O ) CHLiR Ph 2 S 2 RC ( O ) CH ( SPh ) R LiSPh {\displaystyle {\ce {{RC(O)CHLiR'} Ph2S2 -> {RC(O)CH(SPh)R'} LiSPh}}}

還元

ジフェニルジスルフィドはジスルフィド特有の還元反応を受ける。

Ph 2 S 2 2 M 2 MSPh ( M = Li , Na , K ) {\displaystyle {\ce {{Ph2S2} 2M -> 2 MSPh (M = Li, Na, K)}}}

水素化ホウ素ナトリウムや水素化トリエチルホウ素リチウム(スーパーヒドリド®)のようなヒドリド試薬もまた還元剤として用いられる。

チオラート塩の PhSM は、求核剤 PhS- の供給源である。ほとんどのハロゲン化アルキルはこれによって、スルフィド(チオエーテル)に転化する。また、水素化するとチオフェノールが得られる。

PhSM HCl HSPh MCl {\displaystyle {\ce {{PhSM} HCl -> {HSPh} MCl}}}

塩素化

ジフェニルジスルフィドは塩素と反応して、塩化フェニルスルフェニル PhSCl を与える。この化学種の単離は難しい。

酸化

メタノール中でジフェニルジスルフィドを酢酸鉛(IV)で酸化するとスルフィナイトエステル PhS(O)OMe を与える。

出典


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