オージェ電子(オージェでんし、英: Auger electron)とは、高いエネルギーによって内殻電子が励起された原子から放出される、特定のエネルギーを持った電子。名称はフランスの物理学者ピエール・オージェに由来する。なお、ピエール・オージェが最初の発見者ではなく、オージェの発表の2年前、1923年にリーゼ・マイトナーによって発見された。

原理

原子核に近い原子軌道にある電子が電子捕獲されたり、X線や電子線で励起され光電子等として放出されたりすると、空いた軌道に外殻から電子が遷移する。このときに放出される軌道間準位差に相当する大きなエネルギーをX線として放出したものが特性X線であり、自己電離して同等のエネルギーを持つ電子として放出されるものがオージェ電子である。ただし、オージェ電子には原子核からのクーロン力が働くため、ふつう特性X線よりも低いエネルギーをもつ。

オージェ電子の持つエネルギーは電子軌道間のエネルギー差に相当するため、ベータ崩壊などで放出される電子とは異なり、単一のスペクトルを持つ。一般に、原子番号の大きな核種になるほど、オージェ電子は放出されにくいとされている。

表記方法

たとえば最初に電子空孔が作られる準位がK殻、空孔を埋めるために遷移する電子の始準位がL殻、放出されるオージェ電子の準位がL殻の場合、このオージェ遷移過程をKLL遷移と表記する。

関連項目

  • オージェ電子分光
  • 光電子分光
  • 走査型電子顕微鏡
  • コスター-クローニッヒ遷移

脚注


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